雑記

◆番外編◆ピアノ工場見学のすすめ

 

1日まるまるピアノ三昧ツアー

2020年7月15日に行ってきたピアノ工場見学ツアーについて、ピアノ好きの皆様にご紹介したく本記事にまとめました。

※前日の晩に都心から車で静岡県掛川市に移動し前泊をしました。

時間割

9:30〜9:50 ヤマハ掛川工場 ピアノ試弾ルーム

10:00〜11:30 ヤマハ掛川工場見学

〜車で浜松市に移動&昼食〜

12:30〜14:00 浜松市楽器博物館見学

14:30〜16:00 ヤマハ本社イノベーションロード見学

ヤマハピアノのふるさと 掛川工場見学

静岡県掛川市にあるヤマハのピアノ専門工場です。こちらはヤマハ公式HPで事前予約すると見学できます。さらに、工場見学前後の時間帯でプレミアムグランドピアノSXシリーズの試弾を申し込むこともできたので併せて予約をしました。

掛川工場に併設するヤマハのハーモニープラザです。車はハーモニープラザ内の来客用駐車場に停められます。

 

電車でアクセスする場合は天浜線の桜木駅が最寄り駅で、工場までは徒歩10分程度です。風情溢れる小さな駅です。

試弾ルーム

今回は工場見学前の9:30〜9:50の時間枠でピアノの試弾を申し込んでおきました。予定時刻の5分前にハーモニープラザに到着し外観の写真撮影などをしていると、係員さんがお出迎えしてくれて試弾室に案内されました。

左奥から、S6X(540万円)、S3X(460万円)、C3X(230万円) の順でピアノが並べられていました。奥の2台がプレミアムモデルで、手前のC3Xは比較用に置かれた標準モデルのピアノです。20分間、この部屋の中のピアノを試弾させていただきました。

まず、耳慣らしのためC3Xを弾いてみます。C3Xは現在のヤマハグランドピアノのど真ん中と言えるスタンダードモデルで、家庭や学校、スタジオやホテル等に多くの台数が普及しています。C3Xを弾いて比較の基準となる音と感触を確認したら、そのままの体勢で左横に平行移動し、S3Xを弾いてみました。これがC3Xとの違いが明確にわかるピアノでした。特に音色の明瞭感が印象的で、低音はボヤっとせず正確な音程感を持った音色で聞こえ、中〜高域は和音を弾いた時に一本一本の弦の音がしっかり聞こえる、粒立ちの良い音色です。ヤマハのピアノは奏者側にもハッキリ音が聞こえます。そのうえで、S3Xは標準モデル以上にタッチの強弱に対して「高感度」にピアノが応答してくれる様子がよく伝わってきました。そして何よりも、感度が高いのにコントロールがしやすく、大きい音も小さい音も自在に表現できる、懐の深さを感じます。C3Xもじゅうぶん素晴らしいピアノですが、S3Xはやはり別格で、2倍の価格差にも納得です。

続けてさらにもうひとつ左のピアノに平行移動し、S6Xを弾いてみます。これはS3Xに大きさのぶんだけのゆとりが与えられたピアノです。全長が212cmなのでスタインウェイBとほぼ同じ大きさです。基本的にはS3Xの延長線上にあるピアノという印象ですが、大きいだけあって、音の分離感や音色の深みが若干優れることは明らかでした。そして、弱音の繊細さはやはりこちらに軍配が上がります。鍵盤の奥側を押したときの感触もわずかにフルコンに近づいているように感じました。

20分目一杯、ピアノの試弾をして違いを体感させていただいたところで制限時間を迎え一旦ハーモニープラザのショールームに戻ります。

ショールーム

ショールームの展示もいくつかご紹介します。

小室哲哉スペシャル。その名のとおり、小室哲哉氏のために誂えられたピアノです。中身はC7でした。これも触らせていただきました。操作感が、お、重い、、、、見た目のインパクトは抜群です。

初期のセミコンで、脚が6本あります。日本楽器製造株式会社の時代のもので来客は演奏できませんが工場見学のプログラム内で説明員さんが音を鳴らしてくれます。しっかり調整されていて、綺麗な音色でした。

左がリヒテルが弾いたフルコンCF、右が初期のフルコンFCです。FCは1952年製で、新品価格は130万円と書かれています。当時の大卒初任給が1万円未満であったことより、現在の価値で2,500万円程度でしょうか。フルコンはいつの時代も高嶺の花であることに変わりはないようです。

来訪された有名人のサインやピアニストの手形が置かれています。手形は左から清塚信也さん、上原ひろみさん、小曽根真さんです。

工場見学

定刻になると視聴ルームに案内されてビデオを鑑賞から始まります。内容は「ヤマハの会社紹介」と「ピアノ作りの前工程について」です。ヤマハの工場見学では組み立て以前の工程は見学コースに含まれないためビデオでの上映紹介となります。室内に設置された自動演奏アップライトピアノがビデオ映像とシンクロして演奏されるという仕掛けつきです。

工場見学は写真撮影禁止のため詳細をUPできませんので概要を記します。

Cシリーズのグランドピアノの製造工場内の組み立て以降の工程を40分ほどかけて歩きながら解説つきで見学しました。C1からC7と、Sシリーズのピアノが工場内の製造ラインを流れます(Sシリーズの調整は別棟で実施。またCFXやCFシリーズのピアノは自動ラインではなく、別の棟で職人の手によって組み立てられているそうです)。テクノロジーによって自動化されている工程もあれば、作業者の腕と技能に頼った工程もあり、従業員さんが活き活きと働いている様子を見てとることができました。

詳細は是非現地でご覧ください。ピアノ好きには、とても面白いですよ。

低湿度な国地域向けに出荷されるピアノは、専用の部屋で一定期間寝かされるとか、材料を入荷してからピアノとして完成出荷するまでに○年かかりますとか、このラインでは1日に○台のピアノを生産していますとか、この工場では○名の従業員が、、、、などという話を交えながら工場内をひととおり歩き終えると、選定ルームに案内されます。

選定ルームには出来上がったばかりのC3が3台並べられていました。その3台を順に同じように説明員さんが弾いて聴かせてくれます。「みなさんはどのC3の音が好きですか?」と質問されると、みんな好みが違うことがそこで明るみになり、これもまた面白い瞬間だと思いました。最後に「このように同じC3でも木という天然素材で作られる以上、個体差があるのですよ〜」ということを説明員さんが説明してくれたところで工場見学は終了となります。

選定室の出口にはこんなお土産が用意されていました。

なお、現在は感染症予防のためツアー参加人数を通常時より制限したり、ソーシャルディスタンスを確保するための目印(音符マークなど)を床に貼るなどの対策のうえで工場見学を開催していただいています。大変な状況のなか、工場を見学させていただいたヤマハさんには本当に感謝するとともに、私たち一人一人もしっかりと感染症予防のための意識を高めなければと思いました。



浜松市楽器博物館

ヤマハの掛川工場から車で40分ほど走ると隣の浜松市に到着します。浜松市はヤマハ、カワイ楽器、ローランドなど名だたる楽器メーカーが本拠地を置く、日本が世界に誇る楽器の街です。

今回は浜松市の中心部にある「浜松市楽器博物館」を見学しました。

車は直結隣接するアクトシティの駐車場(100円/20分)に駐車します。

入場料金は大学生以上 800円 高校生 400円 中学生以下は無料です。

1,300点に及ぶ楽器が展示されているので見応えは十分すぎます。

 電子楽器コーナーにはヤマハ、ローランド、コルグの鍵盤や、Fenderローズピアノもありました。

 国産ピアノやオルガンです。今日、我々が手軽に良質なピアノに触れられるようになったのは、浜松の地でヤマハとカワイが競い合った功績なんだと書かれていました。本当にその通りだと思います。

ヤマハFC。あれ?さっきヤマハ掛川工場で見たものと同じですね。こちらは1950年当時価格約150万円と書かれていました。

  西洋鍵盤楽器フロアです。構造的に特徴のあるスタインウェイやベーゼンのピアノや、チェンバロやチェンバロから派生した初期のピアノなど、珍しいものがありました。中にはカワイ楽器さんが復元製作したものもあるという話を聞かせていただきました。

中世ヨーロッパのチェンバロは装飾がゴージャスです。音楽が上流階級を対象とした文化であったことがよくわかります。

手の込んだ彫りの深いデザインは美しいです。そんな中、安価でシンプル、コンパクトなピアノとして庶民の家庭にピアノを普及させるきっかけとなったのがスクエアピアノです。このピアノが音楽演奏を身近なものにしたのだから、功績は偉大ですね。  

 オセアニア、アフリカ、ヨーロッパの楽器コーナー。

  アフリカ系は、「吹く、叩く」シリーズが豊富な印象でした。

アジアの楽器コーナー。ゴールドカラーのオンパレードです。

一般的な見学所要時間は1〜1.5時間程度です。



ヤマハ本社イノベーションロード

楽器博物館から車で約10分。浜松市内にあるヤマハの本社内にはイノベーションロードという企業展示コーナーがあり、事前予約をすると見学ができます。車は来客者用駐車場に停められます。

イノベーションロードの入り口です。ピアノブラックの壁がここがピアノメーカーであることを静かに主張しています。今回は14:30〜16:00の時間枠を予約しました。少し早く到着し、受付を済ませてロビーで待機しました。展示室内の消毒作業が終わり、定刻になると入場できます。

広い空間に、ヤマハの楽器製品がたくさん展示されています。ちなみにエンジンやバイクのヤマハは、「ヤマハ発動機」という別会社なので、それらに関する展示はイノベーションロードにはありません。

入ってすぐ、まずピアノ。手前からCFX、C7X、ベーゼンドルファー200、C5X。

反対側にはC1XやGB系等が設置されていて、合計9台のピアノの音色やタッチの違いをじっくりと確かめることができます。これだけのヤマハピアノを横並びで比較できる機会は貴重です。

やはり、CFXの表現力の広さと懐の深さは桁違いです。ただ驚いたことは、C7XもCFXに通ずる表現力を持ったピアノだと感じられたことです。低音の輪郭感や音色のコントロールのしやすさが頭一つ抜けて優れていて、弱音の発音がとても綺麗でした。

ベーゼンも1台あります。ベーゼンは経営上はヤマハグループに属しています。ベーゼンは時間をかけてじっくり向き合ってやっと本当の素晴らしさが分かる性質のピアノなので、今回の限られた時間内ではあまり触りませんでした。逆の言い方をすると、ヤマハのピアノは音の良さが”わかりやすい”というのがひとつの特徴でもあります。

グランドピアノのカットモデルです。ピアノを構成する部品は全部で8,000個くらいあって、そのうち約6,000個がアクションの部品です。と午前中に掛川工場で教えてもらったことを思い出しました。

こちらもフルコンCFです。リヒテルが弾いた個体で、サイン入りです。このような貴重なピアノも試弾できます。

ギターやエレキバイオリンも試奏できます。40万円のクラスのギターも試奏できます。ピックやチューナー、エレキギター用のアンプやヘッドフォンも用意されています。ヤマハはAREという独自の木材改質技術を持っており、グレードが高めのギターやバイオリンなどにはARE処理が施されている点にも注目です。

こちらはエレキベース。

アナログ電気ピアノです。これは現在のデジタル式の電子ピアノとは違い、実際に張られた弦をハンマーアクションで打鍵し、振動をピックアップで拾って出力する、いわゆるエレキギターのピアノ版です。本物のピアノのように弦振動を拡大する響板はありません。※これは演奏禁止でした。

金管、木管楽器もズラリ。さすがは天下の総合楽器メーカー。

 いまヤマハが力を入れているディスクラビアとマルチチャンネル録音されたドラムとウッドベースが自動演奏を聴かせてくれます。驚くべきことは、ステージ上に普通のスピーカーは一つもないということです。ウッドベースは駒についた振動スピーカーがボディを鳴らす仕組みで、ドラムは各パーツに組み込まれた専用の振動スピーカーが発する振動で全ての部位が独立して音が鳴ります。全ての楽器が楽器としての音を発するのでライブハウスにいるのと同じです。臨場感を是非この場所で体感して驚いていただきたいです。ちなみに、私が行った時にはH ZETTRIOの演奏が再生されていて迫力満点でした。

展示室の片隅では、自動車のインパネ展示が異色を放っています。トヨタの最高級車「センチュリー」の内装パネルはヤマハが担当したそうです。特に継ぎ目の無い一枚の木目パネルを美しく成形して仕上げるには高い技術力が必要なため、ヤマハの協力なくしては実現できなかったのです。楽器づくりのノウハウがこんなところにも活かされていたとは、興味深いものでした。



ぜひ行ってみてください

世界一、二のピアノ工場、楽器メーカーを気軽に見学できるのは日本の特権です。機会があれば見学してみてください。

ヤマハ掛川工場見学予約 (無料・要予約)

ヤマハイノベーションロード (無料・要予約)

浜松市楽器博物館 (¥有料・予約不要)

また、今回行けなかったので紹介できなかったカワイ楽器もピアノ工場の見学を行なっていますが2020年7月現在、コロナの影響で工場見学を開催していません。

カワイ楽器工場見学 (無料・要予約)

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