ストリートピアノのマナー

ストリートピアノではさまざまな出会いや交流が生まれます。

そんなストリートピアノの使用マナーに関してSNS等では様々な意見が交わされます。

「マナー」という言葉の解釈は個人の主観や状況背景によって異なりますが、みんなが気持ちよくいられるためにはその空間における善良な調和関係を意識することが大切です。

みんな平等

ストリートピアノに関わる時、全ての人は平等です。

プロ、アマチュア、初心者、幼稚園生、社会人、おじいちゃん関係なく皆平等です。

プロだからといって優先的に弾くことはありませんし、初心者だからといって謙遜する必要もありません。

みんな平等です。

自由

ストリートピアノは誰でも自由に弾くことができます。

自由」は個人の自立責任の上に成立します。

みんなが末長くストリートピアノを楽しめるためには、私たち一人一人の個人が責任ある行動をとることが大切です。

責任という意味では、周囲や管理者に迷惑をかけない配慮と行動をすることが基本ですが、これに加えて皆がプラスアルファの思いやりを持つことで日本のストリートピアノ文化はより良いものになり、自由の質が高まります。

ピアノを大切に

壊さない

管理上フタや屋根、譜面立て等が固定されている場合は故意に状態に変化を加えてはいけません。

一歩間違うと「器物損壊罪」の適用となる場合もあるので管理状態に従いましょう。

乱暴をしない

周囲の注目を集める為に、鍵盤の上に肘や手のひらをついて乱暴に大きな音で不協音を鳴らすというパフォーマンスをSNSの動画等で見たことがありませんか?

幼い頃に同様のことをした経験がある方も珍しくはないと思いますが、大人がやる場合は全く事情が異なります。

一般的にピアノの鍵盤は、何十キログラムもの荷重を受け止められる設計にはなっておらず、必要以上の荷重を与えると構成部品の致命的破損のきっかけになります。

鍵盤とペダルは単なる入力装置だと認識している方も多いと思いますが、これらはピアノの中の重要な部品に物理的につながっている、ピアノの顔とも言える部分なので大切に接しましょう。

汚さない、散らかさない

演奏前には手指を清潔にしましょう。濡れた手で触るのも避けましょう。

もしピアノに汚れなどを見つけた場合は、出来る範囲で綺麗にしてから弾かせていただきましょう。また、中には弾き終わった後に鍵盤をサッと一拭きする粋な方もいらっしゃいます。

清潔を保つために、飲食しながらピアノを演奏する行為はやめましょう。また、ピアノの上には絶対に飲食物などを置かないようにしましょう。こぼれたら大変なことになります。

また、楽器の周囲を散らかさないようにするとともに、散らかっていた場合は可能な範囲で整理をするなどし、一人一人が自治意識をもって接しましょう。

強すぎる打鍵に注意

ストリートピアノの中にはピアノの仕様や調整状態、設置環境等の要因によって思うように鳴り響かないピアノもあります。

たとえばアップライトピアノならば、背が低いピアノよりも高いピアノのほうが良く鳴ります。設置環境では畳の部屋よりも、硬い材質の床や壁に囲まれた部屋の方が良く鳴り響きます。これに限らず、様々な要因で楽器の音色は成り立ちます。

問題は、音の鳴り響きにくいピアノに出会ったときです。弾いても思ったように響かないと感じると打鍵力を強めて大きな音を響かせようとしてしまいます。強い打鍵で大きな音を出せば、他の弦もより大きく共鳴して鳴り響くことでリッチな音色にも聞こえる部分もあります。音を聴きながら打鍵力をコントロールすることも技術のひとつですが、ピアノという楽器はその特性上、響板からは奏者に聞こえている以上に大きな音が出ています。奏者に聞こえる音はボディや譜面台によって弦や響板から隔てられた「こもった音」いわゆる柔らかめの音で、これを基準に、より大きく豊かな音を出そうと思って強い打鍵をすれば硬く大きすぎる音、つまり騒音と認識されやすい音が響き渡ります。

強すぎる打鍵は騒音として周囲に迷惑をかけてしまう他に、アクション(鍵盤機構)にもダメージを与え、消耗部品を必要以上に痛めつけるほか、調律状態を加速度的に崩壊させてしまいます。

ペダルについても必要以上に強い力で蹴り込んだりすると、ペダル支柱の接着や締結がフレームから離れ、破壊という形でペダルが機能しなくなった例が多々あります。

自宅のあなたのピアノであれば自由に弾いて、好きなときに修理や調律ができますが、ストリートピアノは手入れや調律の機会が限定的です。

ストリートピアノは、運営に携わっている方々と関わる皆が大切にしあってきた結果の積み上げで存続できています。

ぜひ、私たちの大切なものの一つとしてストリートピアノに接させていただきましょう

不具合や気になる点を見つけたら

ストリートピアノは限られた予算の中で運営されており、鍵盤の動作が悪かったり、調律や整音状態が良くないものもありますので、ある程度の調整不足は許容して弾かせていただき、致命的な不具合を発見した場合には運営者に伝えましょう。

中でも、イスの脚が壊れかけている、ピアノが異常にグラグラしているなどの、安全に直接関わる情報は一刻も早く運営者に知らせましょう

また、ピアノの運営に対して、「こうしたらもっと良くなるのではないか」など、改善提案が思いつく場合は運営者に伝えてみましょう。連絡ノートが置かれている場合はそこに記入しても良いでしょう。

ピアノの運営に私たちが積極的な姿勢で関与するという小さな心がけの積み重ねがストリートピアノが健全に続いてゆくために大切なことです。

発展的な楽しみ方

連弾

場所によっては大きな音での演奏は避けるようにと注意書きがある場合があります。連弾はソロ演奏よりも全体の音量が大きくなりやすいので注意をしましょう。また、椅子から落ちないようにご注意を。

歌唱、弾き語り

歌唱禁止が掲げられているストリートピアノもあります。歌を歌いながらピアノで弾き語りをすると気持ち良いものですが、鍵盤や蓋等に唾液等が飛散します。また、設置者の雰囲気方針によって歌唱が禁止となっている場所もあります。歌唱可能なピアノで弾き語り等をする場合は、飛散に注意し、演奏後も清潔を心がけましょう。

他楽器とのセッション、合奏

他楽器とのセッション禁止を明記している場所が多くありますのでルールを確認しましょう。他楽器とのセッション可否がわからない場合や、ピアノよりも大きな音の出る楽器(金管楽器や打楽器等)を使用したい場合にはトラブル防止のため事前に運営者に確認をしましょう。

楽器を持ち込む場合は、通行や運営の妨げにならないように気をつけましょう。特に楽器ケース等は通行の邪魔にならず、演奏中に常に見える場所に置くようにしましょう。

また、ひとつのグループが大人数でピアノを取り囲んでセッション騒ぎをすると、ソロ奏者が近寄り難くなってしまうので、一度の人数は多くても3名以内を目安にするなどの配慮をしましょう。

乱入セッション

YouTubeには「抜き打ちで演奏に乱入してみた結果!」などの動画がたくさんありますが、ほとんどのものが事前に打ち合わせがされた企画か、気の知れた仲間内での嗜みです。

一般的に、ほとんどの奏者は突然の乱入に困惑します。

気の知れた仲間同士なら問題なくても、見ず知らずの奏者の演奏にむやみに乱入する行為はトラブルを引き起こす可能性もありますので基本的には避けましょう

占領行為の禁止

周囲を見渡そう

いつもと違う環境でピアノを演奏して、更にはギャラリーの方々から拍手をいただくなどするとつい気持ちよくなってしまうものです。そうでなくとも、いつもと異なる環境でのピアノ演奏は誰にとっても刺激的な体験です。そう、そうやって演奏を楽しみにストリートピアノにやってくる奏者はあなただけではありません。

1曲演奏が終わったら一旦ピアノから撤収して周囲を見回してみてください

さっきまでベンチに座ってスマホに向き合っていた女の子がピアノの演奏を始めるかもしれません。にこやかな笑顔であなたの演奏に聞き入ってくれていた男性がピアノに座って演奏を始めるかもしれません。子連れのお母さんが子供にピアノを触らせてあげるチャンスを待っていたかもしれません。

ほとんどのストリートピアノ は順番待ちという概念が曖昧で、人々がそれぞれ柔軟に譲り合いながら楽しんでいます。興味を持って近づいてきた小さな子供には優先的に順番を譲るというあたたかなシーンもよく見かけます。

占領かな?と思ったら

そんな中、10分以上連続してピアノ演奏を続けてる奏者やグループは「占領行為だ」などとバッシングの的にされてしまう場合があります。演奏に夢中になれば時間が経つのを忘れてしまうのは誰でも同じです。待っている側はいつまでも終わらない演奏にイライラしてしまう場合もありますが、目の前で演奏している奏者は悪意を持って弾いているわけではありません。そんな方には是非、曲の節目などで「綺麗な曲ですね」とか「今のはなんという曲ですか?」などと声をかけて、まずはコミュニケーションをとってみましょう。

私たちは共通の「ピアノが好き」という無邪気ともいえる気持ちを持って偶然にストリートピアノで出会った仲間です。

自分自身が占領しないように細心の配慮を払うことはもちろんですが、占領と思しき状況に出くわしても罵ることなく、仲間であるという認識をもってコミュニケーションを試みましょう。同じ趣味の人間同士なのでコミュニケーションが始まればお互いの人生がより豊かになることでしょう。

ストリートピアノを用いたリサイタル等のイベントを開催したい場合は運営者に相談をしてみましょう。企画として検討していただける場合や、コンサートイベントへの参加情報を得られる場合もあります。時間をかけてピアノ演奏に没頭したい時は、有料のピアノレンタルスタジオやレンタルサロンを活用しましょう。

リクエスト

聴いていてくださった方から演奏後にリクエストを受ける場合があります。その場合でも、いったんはピアノの椅子から離れて周囲の状況をよく確認し、次に弾きそうな奏者がいなければ可能な範囲で応じながら楽しみましょう。「え、そんな、いきなり言われても弾けないよぉ、、、」という場合であっても、リクエストをしてくれた方はあなたの演奏に魅力を感じたということですので感謝の気持ちを持って言葉を交わしましょう。

逆に、演奏後に「はい次、リクエストありますか?なんの曲にしますか?」とたまたま居かかった通行人相手に積極的にリクエストを募る奏者も少数ですがいます。何にでも応じられる腕前を披露したい気持ちはわかりますが、この場合、悪意はなくとも占領行為になってしまいますので、一曲弾き終わったら一旦ピアノから撤収しましょう。ストリートピアノは私たちのリサイタル会場ではありません。奏者が通行人に積極的に絡む行為はストリートピアノ存続に関わる問題に発展する場合もあります。聞き手が弾き手である可能性も考慮してお互いが気持ちよく過ごせるよう、奏者は適切な距離感と謙虚な振る舞いに努めましょう

奏者側が主体となってリクエストを募るような場合は、十分なコミュニケーションがとれている方を相手とすることが望ましいでしょう。

撮影

撮られる場合

演奏中に通行人の方々から動画や写真を撮影される場合があります。「撮ってもいいですか?」と尋ねてから撮影される方は少数派ですので、撮影される覚悟をもって弾きましょう。

もし余裕があればカメラを見てニッコリ!あなたとストリートピアノの印象UPは間違い無いでしょう。

撮る場合

もし、あなたが他の奏者さんの演奏を撮影する場合は、なるべく演奏前や後に一声かけましょう。撮影した動画を奏者さんに送ってあげるなどすると喜ばれる場合が多いです。

撮ってもらう場合

ストリートピアノで知り合った方などに、あなたの演奏を撮影してもらうように依頼する場合もあります。希望があればどのように撮影してほしいのか(場所や角度など)を具体的に伝えてお願いをすると良いでしょう。

依頼されて撮影する場合

撮ってもらう場合と同様に、具体的にどのように撮影してほしいかを確認してから撮影すると良いです。預かったスマホなどで撮影する場合、指でカメラの一部やマイクを塞いでしまう場合がありますので、どこにマイクとカメラがついているか、事前に確認しましょう。

自撮りする場合

カメラ設置場所の配慮

スマホやカメラを用いて自撮りする場合は、自分の管理できる範囲内で、かつ誰の迷惑にもならない場所に設置しましょう。ピアノの鍵盤横に撮影機器を置く場合は、ピアノを汚したり傷つけることがないように気をつけましょう。

カメラの設置高さが極端に低い場合、周囲に盗撮の要素を思わせてしまう可能性もあるのでカメラは鍵盤の高さ以上の場所に設置しましょう。

三脚の使用

まず三脚の使用禁止がルールで定められていないか確認しましょう。三脚は広げると大きな設置面積を要するので、設置の際には通行の妨げにならないように十分に注意しましょう。

また、三脚を設置していると、本格的に撮影しているという印象を周囲に与えるので、通行人の方々が困惑しないよう、通行人が映らないアングルで設置するなどの配慮を忘れずに。

SNSやYouTube等への投稿

SNSやYouTubeに投稿する目的の動画を撮影する場合は、通行人やオーディエンスの顔が明確に写り込まないように注意しましょう。もし明確に写ってしまった動画を投稿する際には、対象者への許可が取れている場合を除いては、画像加工で対象部位にモザイク処理を施すまたは映像の解像度を下げる等の配慮をしましょう。

演奏の事前告知について

  • ○月○日19時〜 ○○駅ストリートピアノでライブ配信します。
  • ○月○日12時〜 ○○のストリートピアノで30分弾きます。ご都合のつく方は聴きに来てください。

運営者公認イベントの場合を除き、個人が集客を目的としてSNS等を通じて上記のように日時を指定した事前告知をすることは避けましょう。

基本的には誰にもストリートピアノを予約する権利はありません

ストリートピアノはリサイタル会場ではありません。告知によりファンを集めたことで公共の場の利用に支障を来した場合、条例違反で検挙される可能性もあります。

ストリートピアノを用いた配信やリサイタル等のイベントを開催したい場合は運営者に相談をしてみましょう。企画として検討していただける場合や、コンサートイベントへの参加情報を得られる場合もあります。時間をかけてピアノ演奏に没頭したい時は、有料のピアノレンタルスタジオやレンタルサロンを活用しましょう。

営利目的使用

営利目的での利用禁止が明記されているストリートピアノも多く、その解釈が多岐にわたっているので見解をまとめます。

営利目的該当行為

具体例を示します。

その場で有形無形問わず物品や機会を公に販売して収益を得ること

  • 現場で演奏に対してお金を徴収する行為
  • グッズ販売、チケット販売、オリジナル音源販売
  • 演奏終了後に投げ銭を募る行為

自らの利益に誘導するための広告営業行為を公に対して行うこと

  • 自身が関わる演奏会のビラ、チラシ等を不特定多数に配布
  • 自身のプロモーションカードを不特定多数に配布

ユーチューバーが動画撮影することは良いの?

ユーチューバーの動画撮影や演奏は営利行為だから禁止せよという声がSNS上で散見されます。ピアノ演奏動画を録画し、YouTubeにUPして広告収入を得ることは禁止事項の営利目的に該当するのでしょうか?

お金を稼ぐことを目的に演奏動画の撮影と広告収益の獲得を反復継続的に行う場合は、社会通念上「業としての行い、事業性が高い」とみとめられ、営利目的に該当するとみなされます

鶏が先か卵が先か、のような話になってしまいますが、ユーチューバーが「お金を稼ぐことを目的にストリートピアノを繰り返し使用する」のであれば上述のとおりNGです。しかし、「その場で楽しむことを目的にストリートピアノを演奏し、録画していた動画をYouTubeに投稿した結果、収益が発生した」という性質であれば営利目的には該当しませんので、該当するかどうかの判別は目的と計画性次第です。

現在、多くのストリートピアノはYouTubeやTwitterなどを通じて存在が拡散認知されています。設置者としてもSNS等の投稿を通じてピアノの存在を広く知ってもらえることは歓迎している側面が強いことから、ユーチューバーによる動画投稿は禁止行為には該当しないと考えている場合が多いようです。特に著名なユーチューバーなどがストリートピアノ演奏動画を投稿すれば、その高い情報拡散力は運営に携わる多くの人にメリットを与えます。

もしも運営者がYouTubeやSNS等への投稿禁止や広告収益化禁止を明示している場合は、その指示に従いましょう。

これからも皆が楽しめるように

ストリートピアノの文化がいつまでも良い形で続くように、関わらせていただく私たちは目の前の状況に対して「損得」ではなく「善悪」に基づいた判断を重ねあい、音楽で繋がる人々の輪を大切にしましょう。

そして、私たちは「ピアノを弾かせていただく」という謙虚な立場であることを忘れずに、関わる全ての人を尊重しあいましょう。

設置・運営者はストリートピアノを通じてたくさんの人々がその場を訪れて楽しんでくれることを願っています。もしあなたのストリートピアノでの経験が素敵なものであったなら迷うことなく、写真や動画をSNSに投稿して世界中の音楽愛好家たちと情報を共有しましょう。後日仲間と一緒に再訪するのも良いでしょう。更には、ピアノの設置運営に関わる商業エリアでのお買い物等を通じて地域経済に貢献することもとても良いことです。

こうして喜びの連鎖を広げてゆくことができたら最高ではありませんか?

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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